「深部体温」とは、
脳や内臓の温度のこと
あなたの体温は何℃でしょうか?実は人の体温は測定する場所によって異なります。通常私たちが脇の下などで測っているのは、体表面の温度です。一方、脳や内臓の温度は「深部体温」といわれ、ほぼ37℃になるように調節されています。
しかし、猛暑の中で過ごしたり、運動で体内での熱産生が高まると、深部体温が異常に上昇することがあります。その状態が続くと体温調節機能が障害を受け、意識障害や臓器障害を起こすことがあり、命を脅かすことにもなりかねません。熱中症の重篤な状況です。
特に運動時に注意が必要なのが肥満傾向の人。皮下脂肪が多いためにカラダの熱を逃がしにくく、重いカラダを動かすためにより多くの熱がつくり出されて深部体温が上がりやすくなるからです。
暑さ対策は「冷やす」。
外から内から体温を下げる新しい考え方
近年は、このような深部体温の上昇に対して、より積極的にカラダを冷やすことが重要とされています。
2025年に日本スポーツ協会(JSPO)が改訂した「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」では、「薄着スタイルでさわやかに」という従来の考え方から一歩進み、「冷やそう、からだの外から内から」という指針が新たに示されました。これは、暑さを避けるだけでなく、体温を自ら下げる行動を取り入れるという考え方です。具体的には、送風やミスト、冷却タオルなどによる外からの冷却に加え、カラダの内部から冷やす方法を組み合わせることが重要とされています。


内部からの冷却の一つとして、細かい氷の粒子が液体に分散した飲料であるアイススラリーの活用も挙げられており、流動性が高く、通常の氷よりも効率的にカラダの内部を冷やすことができるとされています。実際に、活動前に摂取することで深部体温を下げ、その後の体温上昇を抑制できると報告されており、暑熱環境下での負担軽減につながると期待されています。
また、イオン飲料を含んだアイススラリーは、水分・電解質・糖質も同時に補給できる点でも有効です。このように、あらかじめカラダを冷やしておくことで、活動中の体温上昇を抑える「プレクーリング」にもつながります。
猛暑日の外出では、
脱水と深部体温対策を同時に
猛暑日は原則、外出やスポーツを控えることをおすすめしますが、用事や仕事などがある場合にはそうもいきません。まずは前日から十分な睡眠で体調を整え、しっかり食事もしておきましょう。食事からは無理なく水分と塩分が摂れて、良い水分補給方法にもなるからです。
外出前にあらかじめアイススラリーなどでカラダの中から冷やすとともに、水分を補給しておくのも効果的です。外では冷やしたペットボトル入りのイオン飲料などを持ち歩き、ペットボトルで手のひらを冷やしながらこまめに水分補給すると、深部体温の上昇を抑えながら脱水対策もできます。合わせて、日陰やエアコンの効いたお店など涼しい場所で休憩を取るように意識しましょう。

高齢者はトイレの回数を気にして外出時の水分補給を控える方もいますが、それは厳禁。外出時もこまめな水分補給を心がけるとともに、涼しい服装や帽子などを活用するほか、緊急時の連絡先などを書いたものを持ち歩きましょう。
また、乳幼児との外出では、地面に近いベビーカー内は気温が高くなることをしっかりと意識し、よりこまめに子どもの様子を見る必要があります。

1976年東京大学医学部卒業。専門は、スポーツ医学、内科、循環器。日本スポーツ協会「スポーツ活動における熱中症事故予防に関する研究班」班長。熱中症や貧血、オーバートレーニング症候群などの内科的スポーツ障害の予防、低酸素トレーニングなどを研究。元国立スポーツ科学センター長。

年齢・シーン別熱中症対策
その対策と対処法について紹介します。
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- 学校・子どもたちに関わる方
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子どもは自発的に飲水行動や温度調整ができないため、熱中症のリスクが高まります。子どもの顔が赤く、大量に汗をかいている場合には深部体温が上昇していることが考えられるため、涼しい場所で休み、水分や塩分を補給するようにしてください。
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- 高齢者・体力に自信のない方
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高齢者の方は暑さや水分不足に対する感覚機能やカラダの調整機能も低下しているため、注意が必要です。室内では室温計などを活用し、部屋の温度・湿度や暑さ指数を確認するように心がけましょう。また、緊急時や困った時の連絡先を整理しておき、万が一の場合は我慢せず助けを求めましょう。
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- 暑熱環境で働く・関わる方
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2025年6月1日から、建設業を含む暑熱環境下での作業現場において、熱中症対策が法的に義務化されました。深部体温をリアルタイムに測定できるウェアラブルデバイスを導入するなど、熱中症のリスクを早期に発見し、適切な対策を講じましょう。
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- スポーツ活動をする方
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2025年6月、日本スポーツ協会は「スポーツ活動中の熱中症予防ガイドブック」を改訂し、「冷やそう、からだの外から内から」を熱中症予防5ヶ条に追加しました。活動前・中・後には、アイスタオルやアイススラリーなどを用いてカラダを冷やすことが推奨されています。パフォーマンスの維持や素早いリカバリーにつなげましょう。
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- クーリングシェルター※に関わる方
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クーリングシェルターは熱中症特別警戒アラートが発表されている期間中、一般に開放されます。熱中症特別警戒アラートが発表されるときには、熱中症予防行動を徹底して行うことが何より重要です。自分の身を守るだけでなく、危険な暑さから自分と自分の周りの人の命を守りましょう。
※誰もが利用でき、暑さをしのげる施設として、市町村長が指定した施設
アンケートにご協力をお願いいたします。




